活動報告2022年8月25日 19:30

選手インタビュー:砂森和也選手の「海とユナイテッド」

精度の高い左足のキックで攻撃を組み立て、豊富な運動量で攻守に走り続けて、精緻な戦術眼にも定評がある鹿児島ユナイテッドFCの左サイドバック、砂森和也選手。
スタジアムには彼と同じ背番号24がプリントされたユニフォームを着て、グッズを掲げるファンがたくさんいます。


砂森選手は同時に、多種多様な方面に関心を示し、発信力を持っていることでサポーターに知られています。
砂森選手のSNSを見ると、山に行ったり、川に行ったり、魚を料理したり。
鹿児島の自然を満喫しているのがよく分かります。
「鹿児島に4年在籍していく中で、地域資源の豊かさ、ポテンシャルの高さに気付かされているんです。自分は県外から来たから分かるんだけど、鹿児島は海産物も農産物も美味しいものがそろっていると感じます。鹿児島の人たちは生まれてからずっと美味しいものを食べて育って、みんな当たり前に食べているんだけど、その当たり前の基準が高いんです」
プロサッカー選手にとってごく一部の例外をのぞくと避けられないのがチームの移籍。
その移籍をプラスにするひとつが、色々な県に行って、それぞれの色を感じられること。
28歳で鹿児島に来てから砂森選手は感度を高く、鹿児島での生活を満喫しています。

砂森選手は順天堂大学を出てから3年間は本田技研工業でサラリーマンをしながら、同社の社会人サッカーを代表する名門Honda FCでプレーを経て、プロサッカー選手となった経歴の持ち主です。
「もともとがしっかりしなさすぎていたんですよ」と笑いながら、今の自分を形作る考えを教えてくれました。
「サッカー選手になることは大切だけど、人として成長することが大事。そのベースに技術が載ってくる。だからベースの部分は何歳になっても、40歳50歳になっても変わらず成長していきたい。そういう考えは大学で監督から学んだことです」
その監督から「当初は頭になかった」企業チームという選択肢を教えられ、選んだのが本田技研工業とHonda FCでした。
「一般常識とか学びました。サッカーと関係の無い会社の会議に参加し、解析データを元に自分で資料を作り報告するわけですよ、上司から叩き台で良いからチャレンジしろって言われて技術の事とかわからないんですけど管理職の人達の前で発表して。。それで"分かりづらい資料"とかパワーポイントのフォントサイズが違うとかみっちり鍛えられました」
そんな3年間を経てからプロサッカー選手となった砂森選手は2年間を香川県のカマタマーレ讃岐で、1年を静岡県のアスルクラロ沼津で過ごした後、2019シーズンより鹿児島ユナイテッドFCでプレーしています。
1年目からリーグ戦の全試合に出場するなどチームの支柱として活躍した砂森選手は、これまでに語ってきたとおり、サッカー以外でも鹿児島の生活を楽しんでいます。

※鹿児島を代表するおはら祭にチームの一員として参加した砂森選手


ここから話は今回の本題である「海の豊かさを守る」ことへと入っていきます。
「海に関わるようになったのは、元チームメイトが引退して名古屋の中央卸売市場で家業をついだことがきっかけです。当時コロナ禍になったばかりで飲食業界とかすごく大変だったわけで、自分になにかできることはないかなと思ってひらめいたんです。鹿児島は太平洋、東シナ海、錦江湾と海に恵まれていて、対馬海流と黒潮からの流れもあるなっていうところでピンと来たんです」
クラブのスポンサー企業でもある津曲商店さんが海産物の手配で協力してくれるようになり、鹿児島から名古屋という大都市へと海の幸をお届けする流れができました。
「名古屋の方から“鹿児島のもの、いいね!”ってなったんです。それで(元チームメイトの)彼が喜んでくれる、名古屋の人たちも喜んでくれる、もちろんスポンサーさんも喜んでくれる。全員が喜んでくれるわけです。サッカー選手として結果を出すこと、ということは外すわけでなく、選手としても人としても応援してくれる鹿児島の人たちにお返しできることって、サッカーだけじゃないって思うんです」

※写真は2022年5月16日にチーム全体で行った練習場近くの海岸清掃にて


そして砂森選手は続けました。
「サッカー選手のするアクションは価値があるんですよ。練習が終わって、家に帰って、できることがあれば、役に立てることがあればやります。もちろん地道に積み上げていくものでもあるので、できることを見つけて、ユナイテッドに関わる人が喜ぶことが増えていく。自分たち選手のアクションがそんなきっかけになればって思います」
4年間を鹿児島で過ごすことで、多くの人と出会い、交流することで、砂森選手の世界はどんどん広がっていっています。
そんな日々のなかで感じるのは地元のJリーグクラブの存在の大きさ。
「たとえば水産業界の人とサッカーの人って繋がりがなくて会話の共通点が少ないんですよ。でも“ユナイテッド”という要素が加わることで、会話が10倍にも広がるわけです。もちろん名前だけあってもだめなので“自分たちにはこういう想いがある”という意思を示すことで、もっと応援してもらえると思うんです。そういうきっかけにできればうれしいですね」
※クラブとスポンサー企業との交流会で歓談する砂森選手(写真は2019年)


サッカー選手の発信力を自覚する砂森選手に環境問題という大きなテーマを投げかけると、かなり考え込み「簡単に言えるテーマじゃないけど」と言いながらも、鹿児島も環境の変化で在来種の生物が減っている一方で、全国的にはまだまだ自然豊かなだし、そういうことにも関わりたいと関心の幅広さをうかがわせます。
そして大事なことと前置きして話を続けます。
「人は無駄を削っているようで、意外と削っているものは豊かさだって感じるんです。便利に暮らすために山を削ったりしていて、感性的にも豊かさがない。もちろん損か得かというのも世の中の世界線としてあるけれど、鹿児島は自然も資源も豊かさなので、その豊かさを発信して守っていくべきだって思います」

※写真は2022年4月30日に喜入中名町にてサツマイモの苗植えをした時のもの


人はどうしても豊かになるほど惰性になり、ちょっとしたありがたみを見落として、当たり前になってしまうもの。
だから「誰かに言われるか自分で気づくかだけの違いなので、自分が発信することで気づいてくれる人がいてくれたらなって思います」
そんな想いで日々鹿児島の魅力を発信しているし、クラブが行っている今回のクラウドファンディングに対しても積極的に情報発信に努めています。
もちろん何度も自身が語ってきたように本業はプロのサッカー選手。
これから佳境に入る2022シーズンに向けての想いも教えてもらいました。

「もちろん目標はJ3優勝J2昇格しかありません。そこに対して自分のスタンスは今年のスローガン“ONE TEAM,ONE GAME”そのままです」
実は砂森選手は今シーズンのリーグ戦21試合終了時点で出場は4試合と、鹿児島在籍4年目でもっとも難しいシーズンを過ごしています。
しかし、そのなかでも自分のするべきことはブレていません。
「チーム内でもそれぞれに立場があって良い時悪い時ありますが、チームがまとまるというところに尽きます。そうでないと勝てないし、その差がこれから出てくるはずです。8月から加入した選手を含めてまだまだギアは上がるし、試合に出ていない選手は出る努力、出る準備をする。試合に出ている選手は結果を出すこと。その相乗効果でチームは上を目指す集団になっていくんです」
どんな状況でもプロサッカー選手として結果を出すために力を尽くし、サッカーを離れた時も感度を高く鹿児島を盛り上げようという意識を忘れることもない。
ピッチ内、ピッチ外、両方で活躍する鹿児島ユナイテッドFCにご期待下さい!