活動報告2025年5月27日 16:44

なぜ会場をこざき会館にしたのか?



「灯を消さないために」──こざき会館という場所が、未来への舞台になった理由

熊本県玉名市天水。静かなこの町の片隅に、50年以上の歴史を持つ一つの建物があります。

「こざき会館」──かつては、毎週のように結婚披露宴が行われ、法事や地域の集まりでもにぎわったこの会館は、人々の人生の節目を見守る“舞台”であり、“記憶の箱”でもありました。

創業者・小崎達司さんが87歳になった今も、あの場所には確かに、人の想いが残っています。けれど、時代は静かに、そして確実に移り変わりました。

会館の利用は減り、コロナ禍が追い打ちをかけ、経営は深い谷底に沈んでいきました。「もう、ここも閉めるしかないかもしれない」──そんな言葉が家族の中でささやかれ始めた頃、一人の女性が立ち上がりました。

それが、小崎さんの孫、「のどかさん」でした。

祖父の味を、時代の中でつなぐ

のどかさんは、言いました。「おじいちゃんの味は、誰かの思い出であり、私たちの誇り。その灯を、私が消したくない」

場所は、かつての披露宴会場のロビー。その一角を、自らの手でDIYし、カフェ「たつべぇ庵」を作りました。照明も、壁も、メニューも、すべてに彼女の想いが詰まっています。

ただ“映える”だけではなく、「味が、語るもの」がある。かつて高齢者中心だった客層に、若い世代が少しずつ足を運び始めたその光景に、のどかさんは希望の芽を見たのです。

変わることは、捨てることではない

会館の可能性を、さらに広げようと、彼女は新たな挑戦を始めます。仕出し料理を使ったスイーツの開発、マルシェイベントの開催、レンタルスペース「ジャオジィ」の開設──そのどれもが、「かつての場所」を、「これからの居場所」に変えていくための工夫でした。

そして、2025年8月23日。こざき会館は、かつての“晴れ舞台”から、“未来を育てる教室”へと生まれ変わります。

「きて!みて!さわって!おしごと体験フェスティバル in 熊本」

このキャリア教育イベントに、会場としてこざき会館が選ばれたのは、偶然ではありません。それは、地域の過去・現在・未来が交差するこの場所だからこそ、意味があるのです。

未来の記憶を、ここから作る

「地域の子どもたちに、夢を描く機会を」「企業と地域の新しい関係を」「食・学び・体験が交わる場所を」──こざき会館は今、そのすべての願いを抱いて、新たな役割を担おうとしています。

築50年を超えたその建物には、無数の笑い声と涙が染み込んでいます。それを“過去の遺産”としてではなく、“未来の礎”として活かす。これこそが、こざき会館の本当の存在意義なのです。

人が集い、交わり、語らい、学び、育つ。

人生の大切な場面にそっと寄り添ってきたこざき会館が、今度は地域の子どもたちの「はじめての職業体験」という新しい記憶の舞台になります。

「灯を、つなぐ」

のどかさんが手を入れた壁に、柔らかな光が差します。そこにいるのは、祖父の背中を見て育った彼女と、地域をもっと良くしたいと願う人々、そして、未来をまっすぐに見つめる子どもたち。

私たちは、このこざき会館に、ただの「場所」を求めたのではありません。そこにある「物語」と「想い」に惹かれたのです。

それは、どんな最新の設備にも代えがたい、“人の心を動かす理由”です。


このフェスティバルは、ただのイベントではありません。

それは、「灯を消さない」ために踏み出した、小さな町の大きな一歩です。
そしてそれを支えるあなたの存在が、地域の未来に希望を灯すのです。